教育エジソン
イメージする方法
更新日:2020年9月27日
(私家版雑誌『イメージ研究誌 変わる』の主催者)T先生には、ご著書『授業が変わる 学習が変わる』を機縁にご指導をいただき、昨秋の教育催眠学会では、発表の機会も作っていただいた。
『自律訓練法からはいる私流イメージ瞑想法の実践』と題する個人的な体験報告に過ぎない発表だったが、望外なことに、発表の後、多くの先生方から共感的なおことばをいただいた。
「自律訓練法がなかなかうまくできない」「どうしたらイメージが見えるのか」など、個人的体験からの質問も多く、日々たくさんのストレスや課題に取り囲まれ、セルフコントロールの方法を求めている先生方が少なくないようだと感じた。
T先生の『授業が変わる 学習が変わる』は、「子どもと教師のイメージ・トレーニング」と副題にあり、教師自身のセルフコントロールにもページを割かれている。その意味で、この研究誌にも、私の居場所はあるかもしれない。
教育催眠学会での発表の続編として、教師である私が、イメージなどのセルフコントロール手法を日常的にどう活用しているか、その具体的な工夫を紹介する。
何らかのご参考になれば幸いである,
イメージする方法
本稿における「イメージ」ということばは、おおむね次のような定義で使うこととする。
外界からでなく、心の中から生ずる、現実感を持った視覚聴覚その他の感覚体験、および、その際「そこにあるかのように」仮想される像を「イメージ」と言う。
こうしたイメージは、催眠や瞑想によってより深く体験できることは確かだが、そうでなければできないと考えることはない。だれでもイメージを体験することはできるし、現に体験している。
というのは、だれでも「ものを思い浮かべる」ことはできるからだ。そのとき、心に浮かんでいるものが「イメージ」なのだと、まず認めよう。
たとえば、今、ちょっとリラックスして、「りんご」をひとつ思い浮かべてみよう。いろんなりんごが浮かぶかもしれないが、あれこれ迷わないで、最初に浮かんだものに決めて、それを見る。そのありさまを観察する。
りんごの色は赤?黄色?黄みどり?
模様はどうなっているか?
形は丸い?角ばった形?歪んでる?
上下左右いろんな方向から見てみよう。重さ、皮の手触り、香りも感じてみる。
いっそ一口かじってみたら、どんな味がするだろうか……?
思い浮かべるときには、あれこれ迷わないのがひとつのコツである。心に一つの形が浮かんだら、まずはそれに気持ちを向けていく。すると、イメージは安定して、色や細部も見えてくる。
イメージは、作ろうとするよりも、観察し味わうことで、より明確になってくるものなのである。
こうした日常的なイメージに気づき、その応用で、イメージトレーニングなどもやってみればよい。深刻に考えて一歩も進まないより、気軽に始めて続けられれば、結果として、イメージ能力そのものも伸びてくる。
私自身、イメージの話をすると、生まれつきイメージ能力が高いように言われるが、そうではないと思う。瞑想も、自分程度のイメージ能力でも、続ければ効果があると信じて続けているだけである。
心の中のスクリーンに、総天然色、ハイファイ音の鮮やかなイメージが、絢爛豪華に展開する……? そんな人もいるのかも知れないが、私にはできない。それでも、今述べたような、「思い浮かべる」ことから、少しずつイメージを深めていくことならできる。
これからご紹介していく私のさまざまな工夫も、特別な能力に依存したものではなく、ごく日常的なイメージを利用してできるのだということを、ぜひ心に留めておいていただきたい。
1994年6月