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  • 執筆者の写真教育エジソン

考える力をつける小論文の授業


 M高校の国語科には、「小論文」という学校設定科目がある。大学などの推薦入試の小論文対策が目標だが、真のねらいは、目標を目指す過程で、論理的思考力をつけ、社会問題への視野を広げていくことにある。

 4,5人の教員で持つその科目の内容を、2年間かけてほぼ固めることができた。出来上がってみると、この分野で私が長年積み上げてきた実践のエッセンスのようだ。年間プログラムの柱となるアイデアをご披露しよう。

①鳥瞰(バードアイ)読解法 

 論理的文章で、筆者は根拠となる事実を挙げながら、主張を展開していく。そこで、事実と意見を見分けて、事実の部分を島のようにぐるりと囲む。残った意見の部分で主題文候補をいくつか見つけて傍線を引き、その中からもっとも言いたいことは何かと考える。こうすると、鳥が空から見下ろす地形のように、文章の構成を広く眺めて、的確に主題文を絞り込んでいくことができる。

この方法は、一年生の国語総合で評論を読む前の基礎練習として提案し、本校の国語科の定番手法になった。癖のある評論では難しいが、新聞の社説などを読み解くには効果が高い。小論文の授業でもこの方法を取り入れ、毎回、一つの社説を鳥瞰読解法で読み、その話題に関連した小論文の課題に取り組む。この一連の学習を最初の単元とした。

②セルフチェックシート

 小論文の書き方を身につけるには、自分の書いた文章を読み直し、書き直す学習が有効だ。そのために私は、「あなたの言いたいことは何?」、「理由はどこに書かれている?」などと問い、生徒自身に考えさせる方法をとってきた。それによって、生徒は自分の考えを明確にし、書き直す力がついていく。

そこで、同じプロセスを生徒が自分の力で踏んでいける「セルフチェックシート」を開発した。私が生徒にかけていく定番の問いが順に並んでおり、それにしたがって作業し、考えることで、生徒は自力で書き直しができる。セルフチェックしたあとで教師に見せれば、効率的かつ効果的に個人指導が受けられる。

③テーマ学習(チーム・プレゼンテーション)

 いくら書き方を磨いても、中身がなければ小論文は書けない。少子高齢化、格差社会、環境とエネルギー、国際関係、教育問題……、小論文で出題されることの多い現代社会の諸問題に関心を持ち、理解を深めることが必要だ。そこで、それらの問題を分担して理解し、互いに解説しあうという「チーム・プレゼンテーション」の学習を考案した。

 生徒は、関心のある大テーマごとに集まり、小テーマを分担する。例えば大テーマが「情報化社会」なら、「インターネットの功罪」、「サイバー犯罪」、「個人情報の保護」などの小テーマができる。チームで相談して解説集を読み解き、各自調べた資料も加えて一人一枚のポスターを作り、チームで発表する。生徒一人ひとりが自分の分担に責任を持ちつつ、チームの連帯感に支えられるというしかけである。ねらいは功を奏し、生徒たちは活き活きと発表し、学びあう場が生まれた。

④ディベート

 小論文入試が終わる11月下旬以降は、みんなの力を合わせて競技感覚で取り組めるディベートの単元を置いた。前任校のT高校で実践したノウハウを活かして教材や資料を揃え、他の先生でも手順にそって生徒に取り組ませていけば、ディベートの試合ができるしくみを整備した。実践の結果、2年目には、録画記録を後輩に見せられるレベルの試合ができるようになった。

 本校では、生徒は4年または3年で卒業していくが、この科目を選択するのは、ほとんどが卒業を控えた生徒である。授業と平行して受験を進め、小論文試験を突破して、それぞれの進路を決めていく。どこまで実力がついたかは未知数だが、合格体験記に「鳥瞰読解法が役に立った」などとあるのを読むと、うれしい限りである。

2011年11月

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