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  • 執筆者の写真教育エジソン

ペーパースピーチで楽しく話す


 教員になりたてのころ、社会人の「話し方教室」に1年以上通った。さまざまな年齢や職業の人といっしょに学べ、得るところが大きかった。それを国語の授業に取り入れて、大森高校定時制の時代には、「話し方」の授業を10年以上続けた。そのときに培ったノウハウがあるので、生徒にスピーチをさせるときの段取り、雰囲気作りには自信がある。

 三ツ折りにしたA4かB4の紙にことばを書いておき、それを順に開きながら見せる。例えば、自己紹介なら、上から順に、名前、趣味、メッセージをマジックインキで大きく書いて、下の2面は裏側へ巻くように畳んでおく。

 人の話に耳だけで集中し続けるのはあんがい難しい。テレビのトーク番組では、会話を字幕で表示し、笑わせどころを強調する。講演会や学会発表でも、パワーポイントで要点を提示しながら話すのが一般的になった。

 文字があると話に集中しやすく、よくわかり、疲れない。ペーパースピーチは、それを教室で手軽にできるしかけである。紙を見せることで聴き手の注意が集中し、話を聴く雰囲気ができる。スピーチする本人も、手ぶらで立つより楽な気持ちで話せる。

 休み明けの「夏休みの思い出」のスピーチでは、キーワードを3つ書いて、順に見せながらエピソードを語る。

 図のように、自分の長所、短所、短所の別の見方を書いて、具体例を挙げながら話すと、楽しみながらものの見方が広がり、お互いの親近感も深まる。

 生徒だけでなく、保護者会でも使える。上から生徒名、保護者自身の名前、最後に2人の共通点を書いてくださいと言うと、初めは首をひねりながら書いているが、実際に話してもらうと、共感できる本音の話が多くて、盛り上がる。

 折った紙を順に開いて見せることで、期待を持たせて、次の情報を提示し、最後に、なるほどと納得させる、笑わせる……などと考えながら紙にことばを書いていくと、話の構成を考える訓練になる。紙を開いて見せるタイミングを意識することで、話の間合いも身につく。キーワードを提示しながら、文字に頼りすぎないで、話自体はその場で考えながら語るようにすると、話す力がついてくる。

 教室では、まず白紙を配り、紙を折る作業から始める。何だろうと思いながら、手を動かすうちに、生徒たちは集中していく。

 スピーチは、まず教師が実演して見せる。そのときに、最初の「こんにちは」への返事や最後の拍手など、聴き手の反応をしつこく要求してやり直させると、たいてい笑いが起きて場が和み、話しやすい雰囲気ができる。これは、「話し方」の授業で身についたワザである。

 もちろん、紙は2つ、4つという折り方も可能だし、表裏に書いて見せるやり方もある。隠していたものを順に見せながら話していく、という点がミソで、バリエーションは無限だ。

2010年1月



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