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  • 執筆者の写真教育エジソン

数字のイメージ記憶


イメージを活用した記憶法については、今まで何度か触れてきた。

 ただ漫然と「憶えておこう」と思うだけでは、情報が脳の記憶ファイルにきちんと入ったかどうかわからない。また、はいったとしても、インデックス(手がかり)をつけておかなければ、行方不明になってしまう。

 そこで、憶えたいときには意識的にイメージ化する習慣をつけておく。すると、記憶がファイル化されたかどうかが実感でわかる。その実感があるものは容易に思い出せ、思い出すときに不思議な快感を伴う。

 記憶できれば便利だが、記憶しにくいと多くの人が感じているのは、まず「数字」であろう。記憶術・記憶法を名乗る本には必ず数字の記憶法が出ているが、本格的に使っている人は少ない。その理由のひとつは、数字をことばやイメージに変換する方法が独自の体系になっていて、まずその体系を新しく憶えなければならない点にある。

 たとえば、ある本では、五〇音のア行を1、カ行を2、サ行を3として、数字を各行のどれかの文字に置き換えてことばを作る。つまり、13なら、「あさ」「いし」「うし」などのことばができる。これなら、確かにいろいろな組み合わせが作れるが、まず数字と行の対応を憶えなければならない。そのことを考えただけで、私などはもう、うんざりしてしまう。第一、これを憶えたら、今まで自然に使ってきた「いい国(1192)作ろう鎌倉幕府」的な語呂合わせの習慣を、まったく捨て去らなければならない。

 そこで、従来の語呂合わせをそのまま使いできたことばをイメージ化して覚える方法を考えた。

たとえば、最寄り駅の利用時間帯の電車の時刻が、毎時00、06、15、21、30、36、45、51だったので、前半後半共通の末尾「0、6、5、1」を憶えるために、「わー、むごい」ということばを作った。無情にも目前でドアが閉まり、電車に乗り損ねた男のつぶやき。そんな情景を思い浮かべつつ、同時に時計の文字盤上にも時刻を時計の針で順にイメージしておく。

 一度憶えたら、駅へ行くときには、何分の電車に乗ろうかと考える。そうして毎日記憶を使うことが、記憶術の極意である。「瞬時に記憶し、絶対に忘れないスーパー記憶術」などというのは、誇大宣伝に過ぎない。イメージを使えば記憶の手がかりができ、さしあたって思い出しやすくなる。それを利用して何度も思い出すようにすることで、記憶が定着するのである。

 このように、ふつうの語呂合わせなら、わざわざ新しいルールを憶えなくてもすぐに実行できる。ただ、その場でぱっといい語呂合わせができるとは限らない。時間がかかっては困る場合も多い。そこで、とりあえず2桁の数字については、あらかじめイメージしやすいことばを考えておくことにした。これが、表記のものである。

 実際に数字を覚えるときは、とっさによい語呂が思いつけばよし、思いつかなければこれを使えばいいという安心感がある。

 これを使って、たとえばT先生の住所と電話番号を憶えてみよう。

 住所の番地は3107。これは「サイ(31)」「罠(07)」だから、先生のお宅の近所で罠にかかったサイが暴れている情景でよい。そこに心優しきT先生が通りかかって罠をはずしてやる。感謝したサイは、涙を流しながら、角でT先生にほおずりした、なんてイメージできれば最高である。

 電話番号の922の3636は、「靴にムーミン、ムーミン」と憶える。T先生の靴に、ムーミンの柄がいっぱいついている。「かわいい!」と思わず笑いが洩れれば、まず忘れない(T先生、ごめんなさい)。

 こうした、イメージに伴う感情が、特に記憶には重要である。

 表のようなことばを組み合せて使うと、論理的には何らつながりのないことば同士を、とっさに無理に関係づけることになり、どうしても不自然になる。が、その不自然なところを否定するのでなく、積極的に楽しもうとすることでおもしろくなり、イメージもいっそう生き生きとしてくる。

 その辺を楽しめるかどうかが、イメージ記憶法との相性であろう。

 しかし、食わず嫌いということもある。実は私自身も、元々はこうした方法に疑問を持っていた。私の学生時代からの親友で、イメージによる記憶術を活用して司法試験に合格した、という男がいる。しかし、本当に合格するまでは、「あいつが受からないのは記億術が原因だ」と友達同士陰口を言い合っていたほどで、ほとんど信用していなかった。

 「あんなめちゃくちゃなイメージを作っていたら、順の中がゴミ箱のようになってしまうのではないか」というのが最大の疑問だったが、実際に自分で続けてみると、決してそうではないことがわかる。

 イメージでとりあえず順に入れて、記憶をくり返し出し入れしていると、やがてイメージに頼らなくとも反射的に思い浮かぶようになる。また、本来の論理的なつながりも見えてくる。イメージは、そこに至るまでの有力な橋渡し役なのである。

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