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  • 執筆者の写真教育エジソン

会話のコツがつかめる練習


 先の講演会で、「イイトコサガシ」代表のK氏が、実演、紹介してくれたのは、誰もが気軽に参加でき、日常で役立つ会話のコツを学べるワークショップである。

 参加者全員でアイスブレイクのあと、6人グループで会話練習をする。まず2人が決められたテーマで、5分間会話する。それを4人が見学し、会話の後に、2人の会話のよかったところ(イイトコ)を1分以内で話す。批判や助言はしない。

 次に、同じテーマの「他の切り口」を全員で出し合う。テーマが「お正月」で、2人の会話がおせち料理のこととだったら、「初詣の話」「年賀状」などが他の切り口になる。

 ここまでが1回の手順で、次にまた別の2人が会話練習に入り、先ほどの2人は見学者に回る。これをくり返していく。

 会話のマナーとして、話す時間をお互いに同じくらいにする、興味のない話でも相手に関心を持って質問する、テーマからずれたら少しずつ話を戻す、余裕のある人がない人に配慮する、などが努力目標として示される。

 見学者のイイトコ探しも、会話内容に対する自分の感想や会話の続きにならないようにする、他の見学者と同じ意見でも表現を変えて自分なりに言ってみるなどの努力目標が掲げられている。また、他人と自分を比較しない、などの心構えを伝え、会話後に脳が疲れるのは当然だとフォローしている。

 この方法を開発したK氏は、発達障害当事者がネット上で知り合い、実際に集まる会に何度も参加したが、一部の人だけが会話を独占し、何も話さずに帰る人たちのことがずっと気になっていたという。そうした経験から生まれたこれらの手順やルールは、会話の苦手な人でも参加しやすく、楽しく話せたという満足感とともに、実際に役立つ気づきが得られるように、配慮、工夫されている。

 このワークショップは、各地で単発に行なわれ、参加者を固定しない。K氏は、「会話のしかたを練習する場であって、人間関係作りの場ではない」と明言し、会話の中で知りえた情報の守秘義務はもとより、参加者同士で連絡先を交換するのも禁じている。

 実演説明を見ただけで、たいへん興味を引かれたが、実際のワークショップは体験せずに帰ってきた。今後、機会を見つけてぜひ参加してみたい。私は高校や大学時代に、仲間同士の気軽な会話にうまく入れず、悩んでいた。こうした練習の場があれば、どんなに救われたかと実感する。今でも、目的のない雑談は得意とは言えない。発達障害かどうかに関係なく、誰もが会話を楽しみつつ、よりよい会話術を身につけるために有効な方法だと思う。

 発達障害の視点から生まれたこうした方法論が、自分はふつうだと思っている人にも役立つ。それこそ、私が目指しているものに他ならない。

2012年6月


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