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  • 執筆者の写真教育エジソン

リラックス法の授業② 教師はわかってくれない?


 リラックス法を教えた「情動」単元のあとは、まとめの「総合」単元だが、最初の二回の授業では、私の提案でグループによる展開とした。第1時は班対抗のクイズ・ゲームで協力し合う雰囲気を作る。そうすると、第2時にはその班で「リレーションタイム」クイズに取組み、楽しみながら年間の学習内容をふり返ることができる。どのクラスでも、生徒は生き生きとして大いに盛り上がったと聞いて、誰がやってもうまくいく、という仕掛けを作る仕事に、自信を新たにすることができた。

 年間の総まとめとしては、リレーションの授業で学んださまざまな方法を自分なりにどう活かしたか、「実践レポート」を書いてもらった。その結果もまたすばらしかった。

 他人の言動にくよくよ悩む傾向のある生徒は、認知の考え方が役に立ったようだ。ある生徒は、認知をシフトすることで母親を一人の人間として理解できるようになった。またある生徒は、アサーションを使って気持ちを伝え、親友との危機を乗り越えた。弛緩法で不眠が解消したり、イメージ法で絵のアイデアが浮かぶようになったという生徒もいる。特定の技法に偏ることなく、それぞれ自分に合った技法を取上げ、具体的な体験を書いている。生徒たちの確かな歩みの記録である。

 こうして年間の授業を終えたのも束の間、来年度の改訂に向けて検討を始めねばならない。そのため、一年間授業に取組んでくれた担任の先生方にアンケートを実施した。すると、意外にも「リラックス法」の評判がたいへん悪い。実施する側の負担感が口々に書かれ、「私はスピリチュアル・カウンセラーではない」というものまであった。しかも、「生徒の関心は低かった」「回を重ねるごとにやる生徒が減った」と観察し、「イメージ法までやる必要はない」と断じている先生もいる。

 しかし、イメージ法の授業の終わりに書かせた生徒アンケートでは、ふだんの生活の中でやってみたいのはどれか、との問いに、呼吸法16%、弛緩法10%に対して、イメージ法は74%と、圧倒的に支持率が高い。自由記述の感想を見ても、「リラックスできた」「いろいろなイメージが浮かんで楽しかった」「体が温かくなった」「感動した」「もっとやってみたい」と、お義理だけでは書けない具体的な感想が並ぶ。先に述べた「実践レポート」でも、約25%の生徒がリラックス法を取上げている。「リラックス法」とくに「イメージ法」に対する教員と生徒のとらえ方に、大きなギャップが存在することは明らかだった。

 考えてみれば、それも不思議なことではない。リラックス法は生徒の内面体験であり、その取組み度合いを外から判断することは難しい。指示された姿勢や動作をしていなくても、内面では取組んでいることもある。しかし、指導の経験がない先生方に、そこまでは想像できない。「生徒が取組まない」と戸惑い、苦慮したとしても無理はない。

 そもそも、こうして学校全体でリラックス法の授業に取組み、先生方が実施してくれること自体、今までの経験からすれば、奇跡に近い。不安を感じながらも取組んでくれた先生方に感謝しつつ、その負担を少しでも軽くする工夫をするのが、私の仕事である。

 そこで来年度は、教師がシナリオを読まなくて済むように、ナレーションを録音した教材を自主製作すればよい。その提案をして、早大側にも了解を得た。

 こうして、実践結果のフィードバックを受けながら、コーピングの授業は、2年目の改良ステージへと向かっていく。

2008年5月


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