教育エジソン
元気の出るキャリア教育へ
M高校で取り組んできた学校設定科目「コーピング」の開発・実践も、3年を経てひと区切りがついた。
人間関係スキルのリレーションタイムのワークシートは、早稲田の先生方との連名で、出版することができた。日々工夫を重ね、皆で実践した成果を、公にできた喜びは大きい。
学習スキル教育のコーピング・メソッドタイムも、一から作り始め、先生方の実践を受けて改良を重ねてきたが、3年間で、ある程度満足のいく形にすることができた。
これらの科目を定着させていくためには、私が独占していてはいけない。管理職とも相談して、メソッド、リレーション、それぞれ次年度の担当者としてふさわしい人を選び、私の方から声をかけた。彼らは快諾してくれ、バトンタッチはスムーズに進んだ。
そんなわけで、3年間取り組んできたコーピングの仕事は、ひとまず私の手を離れた。
では、次に私が取り組むべき仕事は何か。そう考えていたおり、三重県立A高校の進路主任S氏を招いて、校内研修会が開かれた。かつて退学者が3割に及んだ底辺校を、生徒に目標を持たせ支援するコーチングの手法で建て直したのが、S氏である。
限られた時間の中で、体験ワークあり、実践事例ありで、盛りだくさんな内容は尽くせなかったが、関西弁で語る氏のことばからは、生徒の可能性を信じ、それをいかに引き出すかという思いがひしひしと伝わってきた。会のあとでS氏と話し、メールをやり取りする中で、「勇気づけ」がキーワードであると知った。氏はそれを、アドラー心理学に学んだという。まさに私自身、S氏との出会いで勇気づけられ、目標が見えてきた。
本校には、1年次の必修としてキャリア教育科目「産業社会と人間(産社)」がある。毎週2時間続きの授業で、進路を考えるさまざまなワークに取り組む。一年担任として3年間授業に参加してきたが、生徒をやる気にする仕掛けに乏しい、と不満を感じてきた。これを改訂し、生徒を元気づけ、前向きになれる科目にしたいと思った。その名乗りを上げると、校内ではさまざま抵抗と議論はあったが、最終的には、私の仕事として任されることになった。
今、4回目の1年担任として、産社の授業作りと実践に取り組んでいる。「自己発見」の単元では、短所を長所に言い換えるワークなどを通じて「みんなちがってみんないい」という自他肯定の雰囲気を育み、高校生活の目標を立てさせた。
続く「職業理解」の単元では、多くの人の仕事によって成り立つ世の中のしくみに気づき、何人かの職業人の声を聴きながら、自分の生き方のモデルを見つけていく。それらを相互交流の中で学ぶようにしたので、生徒の反応もよいと、先生方には好評をいただいている。
2010年8月