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執筆者の写真教育エジソン

リラックス法の授業① 呼吸法、弛緩法、イメージ法


 M高校の独自科目「コーピング」の話。前回紹介した学習スキルの「メソッドタイム」に対して、もうひとつの「リレーションタイム」では、人間関係スキルを学ぶ。開設準備の先生方と早大とで共同開発したプログラムの素案があり、それを改良し、責任を持って授業の実施につなげる、というのが私の仕事である。

 認知行動療法の枠組みで、認知、行動、情動の単元を立て、対人関係ストレスにどう対処(コーピング)するかを気づかせていく。

 夏までは「認知」単元の授業で、A・エリスの「ABC理論」を学び、同じできごとでも複数の認知(考え方)ができるようにしていく。

 秋からの「行動」の単元では、ソーシャルスキルとして、話の聴き方や会話のスキル、アサーションによる自己表現を学ぶ。

 つづく「情動」は、筋弛緩法と自律訓練法によるストレスマネジメントの単元である。

 しかし、長年かけて自律訓練法を習得し、自分の生き方に活かしてきた私から見ると、自律訓練法の体験プログラムは、あまりに薄っぺらなものに見えた。私自身も前任校で、生徒に自律訓練法を紹介し、体験させたことがあるが、周到に考えて準備をした。中途半端なことをして、「効果がない」と思われてしまうと、逆効果である。

 そこで、私の経験から、生徒が効果を実感でき応用もしやすいように、①呼吸法、②弛緩法、③イメージ法という三つの技法に再編成して、改訂の了解を得た。その上で、自律訓練法はおまけに紹介する程度とする。

 それぞれの技法に一回の授業を割当て、その中で段階を踏んで体験を深め、最後に、日常で使えるコンパクトな方法にまとめていく。

 例えば弛緩法なら、腕の緊張・弛緩を体験させ、上半身の緊張・弛緩、下半身・全身の緊張・弛緩へと深める。それから、呼吸と緊張・弛緩とを連動させ、最後に、息を吸いながら肩を持ち上げ、息を吸いながら力を抜いてリラックスを味わうという、「ミニ弛緩法」(オリジナルな命名)を教えて完成とする。授業の流れの中で、弛緩法のリラックス効果を実感し、「ふだんでも使えるかな」と思ったところで、生徒たちは「ミニ弛緩法」というお土産を持って帰れる。

 そうして、生徒が学びやすい内容を考えつつ、同時に、授業を担当する担任の先生方が、どうしたら実施できるかに知恵を絞る。この分野に関して、私は知識と経験を持っている。だから、自分ができても当たり前。それを誰がやってもできるように、仕組みとして用意してこそ、知識と経験を活かしたと言える。

 そこで、できるだけシンプルなシナリオを作り、教員がそれを読み上げれば実施できる形とした。しかし、読み方だけは実地に練習が必要である。そこで、12月に設けられた90分の教員研修会で、先生方に3つの技法を体験しつつ、相互に生徒と教員役でシナリオを読む練習もしてもらった。ときにたどたどしく、ときに名調子で、シナリオ読みに取組む姿は、和気藹々として微笑ましい。最後にイメージ法の体験をして、めいめいのイメージを語り合い、和やかに研修会は終了した。「リラックスできました」と何人かの先生から言われ、授業を目的としてこんな研修会ができるのは、つくづくありがたいと思った。

2008年5月

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