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  • 執筆者の写真教育エジソン

T高校でした仕事


 異動は結果を待つばかりとなり、3年間担任してきた生徒たちも期末試験を終え、受験に向けた日々を過ごすようになった1月下旬、本校で「キャリア教育研究協議会」が開かれた。地区の公立高校の進路担当者 100名ほどが集まる中で、私は、T高校の「総合的な学習の時間」の実践を報告した。

 本校の「総合」は、「進路」を考える「生き方・在り方」学習がテーマである。1学期は、進路適性テストなどで自己理解を深め、夏休みに職業人へのインタビューを行なって、2学期に発表する。秋以降、教員の個性を生かした選択講座を受講する、という年間スケジュールである。2年次には、夏の課題が、学校調べのオープンキャンパス・レポートになる。

 当時の進路主任を中心に作成した、グループや発表を盛り込んだプログラムであったが、1年目の現実は、惨憺たるものであった。

 グループを指導した教員は、「話し合いがなかなか盛り上がらない」、「気まずさに間が持てない」など、不満を洩らした。レポートの発表も、グループの代表はいやいや押しつけられ、聞き手も無関心で、臨席した教員からは、「拷問のようだった」と報告された。

 そこで翌年、実施2年目に、私が1学年の「総合」担当となったのを機に、基本計画を踏襲しつつ、国語の授業で培ったノウハウを生かして、改良を加えた。例えば、個人が発表するときは、必ず、「こんにちは」とあいさつし、仲間も「こんにちは」と返す。それを教員が率先してやって見せる。発表が終わったら、必ず仲間が拍手する。それだけで、温かい傾聴の雰囲気ができ、発表は盛り上がる。

 さらに、グループ内での交流の際、紙に大きく字を書いて見せるビジュアル的な手法を考案した。2つ折にした紙の表に、適性診断結果の「向いている職業」の中でうなずけるもの(例えば「編集者」)を書き、裏に折った面に自分では意外な「向いている職業」(例えば「トリマー」)を書いておく。まず「編集者」について語り、「実は、意外と向いているのは……」と、裏を返して、「トリマー」について語る。すると、聞く方も興味津々で、盛り上がる。そうした技法をいくつも考え、ワークシートとマニュアルで、どの教員でも実施できるようにした。

 さらに、夏休みの課題レポートのクラス発表では、グループでポスターを作り、役割分担して発表者を盛り立てるという「みんなでサポート方式」を考案、実施した結果、どのクラスも、生徒が自主的に動いて生き生きとした発表会ができたと、好評だった。

 学年の先生方の理解の賜物だが、自分のアイデアで授業を手順化し、生徒が本当に動くノウハウを、教員同士で共有できる、という確かな手応えが得られた。今回の発表では、その実践をまとめることができた。くしくも、T高校でした自分の仕事の意味を再確認する貴重な機会となった。

 異動の結果は、2月に内示となったが、希望通り○○地区チャレンジ、正式名称「公立M高校」への転任となった。

 私は今まで、多くの心理技法を学び、それを自ら実践する一方で、国語の授業に生かし、さらに「総合」のカリキュラム作りにも生かしてきた。その経験を生かして、M高校で、生徒の力を引き出すための具体的授業方法を考案し、誰もが使えるツールとして整備していく。その方向性がはっきりと見えてきた。

2007年6月

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