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  • 執筆者の写真教育エジソン

学童保育のキャンプ② 父母たちのチームワーク


 夜8時。父親5人、母親5人が集まった。1年生の親が6人だった。専任の指導員が2人。私の依頼で、W氏も同席してくれた。K先生が先に発言を求めて、今までの宿泊キャンプの経緯と意義を話した。そのあとで、私は資料を配り、日帰りキャンプ案を説明した。K先生の意見に真っ向から対立する形となった。司会のO氏は、順に皆の発言を求めた。

 若い母親は、一度日帰りにしてしまうと、元の形に戻すのはとても難しいのでは、と言った。別の母親は、子どもが宿泊キャンプを楽しみにしてたのですがと、残念そうに話した。口ひげの若い父親が、誰もができる組織作りも大切だが、担当者の個性が出た方がおもしろいと話した。次々と続く発言を聞いて、K先生は、嬉しそうな表情になっていった。

 私の左隣に座っていた父親が、最後に、宿泊キャンプがやりたくて実行委員を買って出たが、長となる人が無理だというのならそれに従います、と言った。それを聞いて、私は、「そうじゃない」と、強く訴えたくなった。

 O氏が、「どうやら、皆さんが宿泊に賛成のご意向なので、多数決ということで……」と言いかけた。「ちょっと待って。ぼくにも発言させてよ」と、私は身を乗り出した。「皆さんがそういうお気持ちなら、私の心配なんて、すべてなくなるわけです。これならできるじゃないですか。やりましょうよ、みんなで」。言いながら、胸にこみ上げてくるものがあった。

 そうと決まれば、私の用意した組織案をもとに、すぐに役割分担の相談に入った。母親たちが食事係や会計に名乗りをあげた。口ひげの父親は、運転には自信がありそうなふうで、トラックの運転を引き受けてくれた。左隣の父親は、レクリエーションに乗り気だった。経験がなくわからない点は、積極的に先輩のアドバイスを仰ぐことにし、同席したW氏も、アドバイザー役を快諾してくれた。

 こうして、キャンプ実行委員会は動き出した。確かに日程には追われたが、私は、参加者を把握し、割りふりをし、全体の流れをまとめて連絡や文書づくりをしていけばいいだけで、各担当の仕事は任せておけたので安心だった。考えてみれば、それぞれ職業を持ち、責任を果たしている大人なのだから、その能力を信頼していればよかったのだ。

 当日は、雨上がりの青空が広がった。私は、トラックの助手席に乗り、ひげの父親と雑談しながら、目的地へ向かった。彼はまだ20代で、中古車の店を経営し、3人の子どもを養う。自営の責任の重みを話してくれた。

 現地に着くと、手分けして重い荷物を運び、子どもたちを川で遊ばせ、薪を焚いて食事を作る。キャンプファイアーも楽しい雰囲気で盛り上がった。子どもたちが寝静まってから、親たちは三々五々集まってシートに座り、酒宴を開く。共に汗を流した仲間と、互いに労い合って酌み交わすビールの味は、格別であった。

2002.8.

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