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  • 執筆者の写真教育エジソン

私流? 論文の書き方


 大学時代の卒論は、文芸科という怪しげな専攻ゆえ「自作の小説作品」で済んだ。だから、現在執筆中の修士論文は、私にとって、まともな論文を書く初めての体験である。

 自分の考えを自由に書くのは得意だが、論文の場合、先行研究を踏まえて論を展開しなければならない。先行研究のまとめを私がどう行なったか、試行錯誤で編み出した方法をご紹介しよう。ただし、明らかに邪道と思われるので、指導教官には内緒である。

 まず、収集した文献のデータはパソコンのデータ・ベースで整理する。画面を一枚一枚の文献カード形式にして、必要項目をすべて入れ、内容を書くメモ欄を広くとる。そこに文献の要約や引用したい個所の抜き書き、自分の考えなどを随時書きこんでおく。

 日本語の文献はそれでいいのだが、問題は英語の文献である。英語文献は、たいてい日本語論文に引用されたものを使う。だから、引用者がその文献を要約している部分をそのままデータ・ベースに書き写しておく。しょせんそれは部分的な内容でしかないのだが、やむを得ない。複数の論文に引用されているものは、いくつかの要約がたまってきて、全体像がおぼろげながら見えてくる。

 もちろん、その英語論文の本文は図書館で入手しておく。しかし、冒頭のサマリーを読めばいい方で、実際にはほとんど読まない。けっきょく、データ・ベースに書きこまれた孫引き要約がその文献のすべてとなる。邪道というのはここである。ここまで暴露すると、どこかからお叱りを受けそうな気もするが。

 さて、そうしてできたデータ・ベースから、論文に使えそうなデータを抜き出す。私の場合は、以前紹介した「インスピレーション」というアウトライン・ソフトの箇条書き画面に入れる。箇条書きを階層的にまとめる作業が手軽にできて見やすいので、適当に考えを書きこんだりしながら、前後を入れかえ、グルーピングして表題をつけたりする作業をしていく。この作業は長期にわたり、少しずつやっていく。その間にまた新しい文献が見つかり、データ・ベースに入れ、「インスピレーション」に書き出すということをくり返す。

 このまとめの作業では、KJ法で培ったセンスが大いに役立った。箇条書きをくり返し読み、似た発想のものを少しずつまとめていく。大学では卒論を書かなかったが、その後KJ法狂いの一時期を持ったことが、私の論理的思考力を鍛えてくれたと思っている。

 そのようなまとめ作業を根気よく続けるうち、先行研究のまとめは、自然とできてしまった。文献の孫引きも、適当に修正が加えられもするが、文脈に溶け込んで違和感がない。よくありがちな、引用に引きずられて論旨がそれるようなこともなく、自分でも不思議なほど、自然に論が流れていく。

 もっとも、専門家が見れば、邪道の手はお見通しかもしれないが……。

1998.12.

#大学院生活

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