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  • 執筆者の写真教育エジソン

3人寄れば② PTA講演会


 ピア・サポート講座を立ち上げてまもなく、S先生に、臨床心理の話をしてほしいとPTA講演会の依頼があった。しかし、一人で話すよりも……と、S先生が取り計らってくださり、3人で協力して行なうことになった。

 当日は、PTA役員のお母さん方を中心に、校長・副校長も含めて20人余りが会議室に集まった。

 テーマは、「高校生を理解するということ」。三部構成で、T先生がピア・サポートの紹介をし、生徒と同じ実習を親御さんにも体験してもらう。生徒のプログラムでは第4回にあたる「関心を持って聴く練習」。

 私は、その応用として、子どもと理解しあうための聴き方・言い方の実習。

 最後に、S先生が長年の教員人生から、生徒たちを受容し、ありのままの自分を開示していくという、ご自分の姿勢を話された。

 私の実習では、具体的な高校生の発言例にどう応答するかを各自書いてもらい、それを出し合い、みんなで考える。「親業」(トマス・ゴードン)にまとめられている「能動的聴き方」と、親が自分の気持ちを子どもに伝える「私メッセージ」の練習であった。

 目の前のお母さん方が、親としては先輩であることを念頭において、自分自身の子育ての悩みも率直に話した。小5の息子との対話でうまくいく面、行かない面。私ばかりいつも子どもの話を聴いてものわかりのいい父親でも、妻との間に齟齬が生じる――。どこの家庭にもあるのだろう。共感の笑いが起こる。

 PTA講演会は、思いがけない副産物だったが、これも、三人で力を合わせることで、楽しい経験となり、ピア・サポート講座の方にも、いいふうに弾みがついた感じがする。

 講座の毎回の授業は、3人が順番に企画し、指導案を出す。みんなでそれを検討し、練り直し、教材を作る。教壇に立つのも回り持ちで、お互いにサポート役に回る。

 T先生は、教材作りの才に長けていて、配布するプリントから、授業中白板に張るカードまで、どんどん現物を作ってくれる。とにかく仕事が早くて、信頼できる。

 倫理の授業で自己開示を続けてきたS先生は、生徒に親しまれ、信頼されている。その存在感は、大きなものだった。

 そうした2人のおかげで、私は、得意分野である体験的授業のノウハウを活かせた。

 それぞれの校務に追われながらも、毎週、保健室に集まり、ああでもないこうでもないと知恵を出し合う。生徒の動きを予想し、話し合っていると、展開のアイデアがあれこれと湧いてくる。そこには、産みの苦しみと同時に、紛れもない創造の喜びがあった。

 最後の講座では、生徒たちと記念写真を撮った。くつろいで自分らしくいられる、楽しい雰囲気が写し留められた1枚となった。

 この仕事をきっかけとして、校内に教育相談の体制と雰囲気を作りたいというT先生の構想にも、3人で取組みを始めている。

2006年1月

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